「うちの子は日本の受験には向いていないので」。インター出身のお子さんを持つ保護者の方から、この言葉を何度も聞いてきました。結論から言うと、東大入試は、インター出身者・帰国子女に対してかなり有利な設計になっています。この記事では、IUMe運営メンバーのうちインターナショナルスクール出身の現役東大生が、精神論ではなく「配点と点数」の話として、その理由と英語の貯金の活かし方を解説します。
「うちの子は日本の受験には向いていない」
漢字が弱い。国語の記述に慣れていない。日本式の詰め込みをやってこなかった。だから国内の難関大は現実的ではなく、海外か、国際系の私大か——そう考えて、選択肢から東大を外してしまう。実際、運営メンバーのインター時代の同級生の多くは、国際教養系の学部や、英語・小論文・面接で受験できる私立大学へ進学しました。
もちろん、それらは良い選択肢です。ただ、「どうせ無理だから」と計算する前に東大を外してしまうのは、とてももったいないと私たちは考えています。受験勉強を進める中で気づいたのは、東大入試が「インター出身者に対して、非常に有利な設計になっている」という事実だったからです。
幼少期の英語は、本人が思うよりずっと落ちない
運営メンバーの一人がインターに通っていたのは小学5年生までです。そこから受験までの数年間、英語の勉強はほぼしていませんでした。学校の授業も聞かず、単語帳も開かず、していたことといえば英語のアニメを見ていた程度です。それでも、高3の東大模試の英語で偏差値70が出ました。
これは特別な例ではありません。むしろ逆で、幼少期に身につけた英語は、本人が思っているよりずっと落ちないのです。単語や表現は多少抜けます。しかし、英語を英語のまま処理する回路、文章の流れをつかむ感覚、音を聞き取る耳——このあたりは、勉強をやめても驚くほど残ります。特に東大入試で難しいとされるリスニングは、帰国子女にとっては最も得点しやすいパートです。
英語ができると、他の教科に時間を投下できる
ここからが本題です。東大受験生の多くは、英語にかなりの時間を割いています。単語、文法、長文読解、リスニング、英作文。積み上げに何年もかかる科目だからです。インター出身のお子さんは、この数年分を、最初から持っている状態でスタートできます。
そして、その浮いた時間を数学と理科に全部投下できる。これが決定的に効きます。なぜなら、東大入試で問われる理系科目は、積み重ねの年数がそこまでモノを言わないからです。
- 物理・化学:実質的に高2〜高3の内容が中心。10年やっている人が特別に強いわけではなく、正しい順序で一定量やり切った人が取れる科目
- 数学:東大の問題は「難問」というより「典型手法を組み合わせて、途中式をきちんと書き切れるか」を見る問題が多く、対策で伸びる領域
つまり、英語はスタートが遅いと絶望的に不利だが、インター出身者は既に持っている。数学・理科はスタートが遅くても間に合う。この2つを組み合わせると、「日本の受験勉強を始めるのが遅かったインター出身者」は、実はかなり良いポジションにいることが分かります。不利だと思われている条件が、そのまま有利に変わるのです。
数字で見る:英語100点なら「残りは半分弱」
抽象的な話ではなく、実際の配点で説明します。東大の二次試験は440点満点で、内訳は国語80点・数学120点・理科120点・英語120点です。ここに共通テスト(110点に圧縮)が加わって550点満点になります。
理科一類・二類の合格最低点は、年度によって変動しますが、近年はおおむね550点満点中300〜330点前後で推移しています(最新の数値は東京大学の公式発表をご確認ください)。共通テストで9割前後を取れていれば、二次で250点取れれば、合格者平均に届くかそれを超えるラインです。
さて、この250点をどう作るか。英語で100点近くを取れる受験生の場合、残りの科目(国語80+数学120+理科120=320点)から、150点を取ればいい計算になります。320点中150点。割合にして47%、半分弱です。
科目別・インター出身者の得点プラン例
上の「二次250点」を科目別に分解すると、例えば次のようなプランになります。
| 科目(配点) | 目標点 | 目標の意味 |
|---|---|---|
| 英語(120) | 100 | リスニング・読解で稼ぎ、要約・和訳・英訳は「型」で最低限落とさない |
| 数学(120) | 50 | 6問中2問完答+部分点。典型手法を書き切る練習に集中 |
| 理科(120) | 70 | 基礎〜標準問題を落とさない。難問は捨ててよい |
| 国語(80) | 30 | 漢字と要約で最低限。深追いしない |
| 合計(440) | 250 | 共通テスト9割前後と合わせて合格ラインを超える計算 |
到底不可能な数字ではありません。数学と理科の「やらなくていいこと」を決めて集中する考え方は、E判定からの逆転合格は可能?現役東大生が断言する「たった2つの武器」でも解説しています。
正直にお伝えしておきたいこと
とはいえ、いくつか補足させてください。
英語で100点は「自動的には」取れない
東大英語は純粋な英語力だけの試験ではありません。英文の要約、和文英訳、英文和訳といった「日本語との往復」が大きな比重を占めます。ここは日本語の運用力が必要で、インター出身者がむしろ苦戦しやすい部分です。リスニングと読解で稼げるアドバンテージは本物ですが、和訳・英訳の型は別途、対策として仕上げる必要があります。運営メンバーの場合、高3で過去問演習だけを英語の対策として行いました。逆に言えば、そこさえ埋めれば100点は現実的な目標です。
国語は「捨てない、深追いしない」
漢字と現代文の記述は、慣れの要素が大きい科目です。ただし配点は80点しかなく、上のプランでは30点しか要求していません。捨てるのではなく、深追いしないのが正解です。
数学は理科ほど楽ではない
中学からの積み上げが効く部分は確かにあります。それでも「英語に使うはずだった時間を全部ここに回せる」という優位は、その分を十分に埋めます。
保護者の方へ
インター出身であることは、日本の受験におけるハンデではありません。二次配点の4分の1以上を占める科目を、他の受験生が何年もかけて到達する場所から始められるという、極めて大きなアドバンテージです。
そして東大は、その優位が最も素直に点数に変換される大学です。二次試験の比重が高く(550点中440点)、英語の配点が大きく、理科は後発でも追いつける。これほど条件の噛み合う入試は、他にあまりありません。
お子さんが「自分は日本の受験には向いていない」と言っているなら、一度この計算を見せてあげてください。必要なのは満点ではなく、英語以外で半分弱です。進路の選択肢から東大を外すのは、その計算をしてからでも遅くありません。
よくある質問
Q. インター出身・帰国子女は東大受験に不利ですか?
むしろ有利です。東大二次試験は440点満点のうち英語が120点を占め、幼少期に身につけた英語力はリスニング・読解でそのまま得点になります。英語で高得点を確保できれば、残りの科目に求められる水準は大きく下がります。
Q. 日本に帰国して何年も経っていても、英語力は残っていますか?
会話の流暢さは落ちますが、英語を英語のまま処理する回路、文章の流れをつかむ感覚、リスニングの耳は驚くほど残ります。入試英語で問われる部分は、かなりの割合で残っていると考えてよいです。
Q. インター出身者が東大英語で苦戦するのはどこですか?
英文要約・和文英訳・英文和訳といった「日本語との往復」が必要な設問です。ここは日本語の運用力が問われるため、別途「型」の対策が必要です。逆に、そこさえ埋めれば100点前後は現実的な目標になります。
Q. 数学や理科は、日本の受験勉強を始めるのが遅くても間に合いますか?
理科(物理・化学)は実質的に高2〜高3の内容が中心で、正しい順序で一定量をやり切れば追いつけます。数学は積み上げの影響が理科より大きいものの、英語に使うはずだった時間を回せるため、十分に埋められます。
まとめ
インター出身・帰国子女にとって、東大入試は「不利」どころか、英語の貯金が最も素直に点数に変わる入試です。英語で100点前後を確保し、浮いた時間を数学・理科に投下すれば、残りの科目に求められるのは半分弱。要約・和訳・英訳の「型」だけは別途仕上げる必要がありますが、それは対策で埋められる領域です。
IUMeは帰国生専門のサービスではありませんが、運営メンバー自身がインター出身ということもあり、「英語の貯金をどう点数に変換するか」という設計は得意分野です。お子さんの現在地から逆算した得点プラン作り、「読める・聞ける」を要約・和訳・英訳の点数に変える指導、空いた時間を数学・理科のどこにどの順番で投下するかの設計を、一人ひとりに合わせて組み立てています。オンライン対応なので、海外在住のご家庭や、帰国直後で塾を探している段階のご家庭からのご相談も受けています。

